恋愛小説を超えた先に、一人の女性の生き方をみた『キャロル』
こんにちは。
みなさんは「ふつうに」恋愛小説なんかを読むのでしょうね。
ノンセクシャルの方も、いたって「ふつうに」読めたりしますか?
アセクシャルの方々、読めませんよね? !(^^)!ケラケラ
わたしはラブソングも、恋愛映画も、恋愛小説もほぼ自分の中に入ってきません。
「♪会いたい」とか「♪あなたを見た瞬間恋に落ちた」とか「♪あなたのいない教室は~」などと歌われても、歌詞はスルーしてメロディーだけを楽しむ感じ。
= 一体誰とそんなに会いたいわけ? 他にすることないのかな? =
心の中で思ってはいても、恋バナで盛り上がる同級生に向かい決してそんなことは言えなかったなぁ。
完全に蚊帳の外状態で、とりあえず話を合わせるためにうんうん頷いたりしてたっけ(懐かしい。。。)
世間がどんなに素晴らしい恋愛映画だと騒いでも、友人には「どうか映画館に誘わないでくれ」と祈っていたし、
ベストセラーと宣伝される恋愛小説も、手に取ったことすらないんじゃないかな?
友人が持っていると話していても、貸してほしいとも思わなかったな。
せっかく貸してもらってもそのまま返すことになっただろうし。「ごめん。忙しくてなかなか読めなくて。。。」とか言い訳して。
しかし、しかし。
例外ってあるんですね。
きっと誰にでもありますよ。
誰の身にも起こりえますよ。たぶん (* ̄▽ ̄)フフフッ♪
読める小説があったのです!!
『キャロル』
映画にもなったので知っている人も多いと思います。
わたしはケイト・ブランシェットさんのファンなので、公開されたら映画を観てみたいなと思っていました。
でも先に見たのは小説の方。
先取りしてでも目を通しておきたい気持ちになったのはどうしてなのだろう?
クリスマス間近の頃、19歳の女性が美しい人妻(キャロル)に出会い恋に落ち、やがて二人の運命を大きく揺るがすことになる自動車旅行に出かけていく話。
小説は、19歳のテレーズの視点から描かれているので、離婚交渉や子供の親権問題で苦悩するキャロルの深い部分よりテレーズの心理に重点を置いているように思えます。
結婚前提に近い異性の恋人がいるけれど、「ちょっと燃えないな」という感じや、戸惑いながらもキャロルに浸透していく様子が丁寧に描かれています。
同性同士の心が交わる瞬間(「恋に落ちる瞬間」とか書くべきなんでしょうね!)は、こんなにも素敵なんだ! と思わせてくれる作品です。
映画の方が、ロマンチックな部分もさることながら、現実の厳しさや辛さ、苦悩がよりよく描かれていたように思えます。
夫と子がいるキャロルは、19歳の彼女と子供の親権との間で大きく揺れます。そしてどちらかを選択せざるを得ないのです。
俳優の力もあるでしょう。ケイト・ブランシェットさんの最後の繊細過ぎる表情は、その少しの変化でキャロルの気持ちを最大限に表現しています。素晴らしいです。ほんと、素晴らしい!
言うまでもなく、この本は同性愛を扱った作品です。
なぜ、恋愛もののダメなわたしがこの作品を受け入れられたのかというと、おそらく好きとか嫌いとかの恋愛部分よりも、
特にキャロルの側に立って夫や子供、義理の両親たちとの関わり、それから自分が大切に思う人との関係を通じて、一人の女性の生き方としてどんな選択や決断をしたのかに感情移入したからではないかと思うのです。
正直、テレーズの側からだけみているといつもの恋愛小説と同じになってしまう気がします。
でも、素敵なキャロルという一人の女性が出てくることで、苦悩のただ中にいるにも関わらず幸福のために前進しようとしたり、陰りもみせる生々しい一人の人間の存在が気になってしまうのです。
原作は自身も同性愛者だったというパトリシア・ハイスミス。主人公リプリーで有名な『太陽がいっぱい』も彼女の作品です。
『キャロル』が書かれた時代は1950年頃。
同性愛者は弾圧を受けたり、正常な状態(異性愛者)に戻るための治療を施されたりということもあった時代。
すでに著名な作品を書いていたハイスミスですが、大衆に単純なレズビアン小説と受け取られることを危惧した大手出版社にこの作品の出版を断られたりもしていました。
そんな時代に、当時としては珍しいハッピーエンドの『キャロル』は、作者が名前を変えて出版したことで、爆発的なヒットを記録するのです。
今では考えられない、まだそういう時代だったのです。そんな頃が歴史上にあったのです。
でもね。1950年って、たかだか70年前の話です。
これからの70年で、いや、それほど歳月がかからないうちに、男も女もなく(まあ、別にあってもいいけれど)今よりももっと様々な面で平等な社会になればいいと思います。
デパートのおもちゃ売り場でアルバイトをしていたテレーズが、クリスマス商戦で多忙を極める最中に買い物に来ていたキャロルに出会うところからこの物語は始まります。
そんなわけで、毎年クリスマスが近づくと、ブックカバーをして家の本棚に並べている『キャロル』を手に取ります。きっと今年も読むだろうなー (*´∀`)